Ph+ALL日記

フィラデルフィア染色体陽性白血病と闘うIT労働者の記録

ビーリンサイト2サイクル目

2週間ほどの休薬期間を自宅で過ごした後、予定通りまた入院することになりました。

入院直前にはお決まりのCOVID-19 PCR検査と、血液検査に加えて。心電図と骨髄検査を行います。骨髄検査は、前回のビーリンサイトがどの程度効果を挙げているかを確認するためにとても重要ですが、目視の検査、遺伝子レベルの検査など、検査結果が出揃うまでには、少し時間がかかるので、入院前にやっておくのだと思います。

入院当日 - CV挿入

入院してまずやることは、中央静脈カテーテルCVの挿入です。首元からカテーテルを入れて、心臓の近くの太い血管まで通します。その首元にはそのカテーテルにつながった2つのポートがぶら下がることになるので、そこから薬を入れたり血液を採取したりすることができます。

このCVのお陰で、採血はいちいち針を刺さずにできますし、末梢に打つことのできないような抗がん剤などの強い薬を投薬することができます。ただし、一度CVを繋ぐと点滴台を常に連れて歩く、不便な生活になります。

私はもう何度もCVを入れているので慣れてはいるのですが、どういうわけか今回は少し苦労しました。通常首元の右側から静脈目掛けてガイドワイヤーを入れ、適切な深さ(私の場合、14−5cmの深さ)に届けてから、そのガイドワイヤーに沿ってカテーテルを入れていきます。そのガイドワイヤーが多分肩の付近で引っかかってしまい、目的の深さまで届かないのです。表面は麻酔をしているし、胸の中には神経がないのか、何となく肩付近に突っかかった感じがしましたが、私には何が起こっているのか全くわかりません。色々苦労した結果、右側からは入れられませんでした。今回初めて、首の左側の血管から左から挿入することになりました。

これで翌日からビーリンサイトが開始できます。

骨髄検査結果

CVを入れた入院初日にも骨髄検査の目視結果が報告されてきました。がん細胞(芽球)に見える細胞数は3%くらいで、前回の入院前の10%程度よりも下がっているようでした。

その翌日いよいよビーリンサイトを始める当日、FISH検査、BCR-ABLのPCR検査、フローサイトメトリーの検査結果が上がってきました。

FISH検査というのは、2種類の蛍光物質をつけたプローブがそれぞれX染色体、Y染色体にくっついて、XY染色体を持つ(私=男性由来)細胞とXX染色体を持つ(ドナー=女性由来)細胞が区別することができます。

BCR-ABL PCR検査はフィラデルフィア染色体陽性白血病に対する検査で、白血病細胞固有に存在するBCR-ABLという遺伝子を検出することができます。

もし前回のビーリンサイトによる治療が効果を上げていたのなら、治療前のがん細胞割合(10%くらいだった)がいくらかは減少しているはずです。しかし、今回の結果を見ると、まるで減っていないことが判明。ビーリンサイトって1サイクル7~800万円する薬らしいのに、効いていない。

同時にフローサイトメトリーという検査の結果も上がって来ました。これはがん細胞の持つマーカー(CD19, CD22など)の有無の分布を2次元で可視化することができます。その結果、やはりビーリンサイトがターゲットとしているCD19を持つがん細胞が減っていない、ということが可視化されていました。

半年前に実施したベスポンサはCD22を持つがん細胞をターゲットにしていて、たった2サイクル実施しただけで、私の白血病細胞からCD22をマーカーとしてもつ細胞は、綺麗に消えてしまったのと、とても対照的です。この検査結果から、私の白血病にはビーリンサイトが効果がなさそうだということになります。

ビーリンサイトは1サイクル4週間もかかるので、効果がないかもしれない治療を4週間もかけて時間を無駄にするわけにはいきません。一夜にして治療方針の転換に迫られました。

つまりどういう意味?

体に負担が少なく切れ味が良いとされてきた2つの治療法「ベスポンサ」と「ビーリンサイト」、それぞれ違う理由ですが、使えなくなってしまいました。

  • ベスポンサはCD22というマーカーを持つがん細胞が標的で、その標的を殺し切ってしまったので、これ以上使っても意味がない。
  • ビーリンサイトはCD19というマーカーを持つがん細胞が標的で、その標的に対して効果がなかったので、これ以上使っても意味がない。

ということで、新し目の薬は全て使い切ってしまったということです。

セカンドオピニオン

妻が「どうしてもやりたい」というので、今回の入院と入院の合間に他の病院に予約を取って「セカンドオピニオン」を受けに行きました。セカンドオピニオンは自分の病院以外の医師に質問したりアドバイスをもらう機会で、例えば自分の病院が採用している治療方針が妥当なのかについて、意見をもらうことができます。

別の病院の医師が何らかの意見を述べるためには、私の病気の状況に関する詳細な情報が必要です。病院の受付に「XX病院でセカンドオピニオンをもらうので、資料を用意してください」申し込むと、(ちょっと時間はかかりますが)準備してくれます。セカンドオピニオンは有料で保険が効きません。私たちがお願いした大きな病院では、30分で22,000円でした。

 

さて、セカンドピニオンでは妻から次から次へと繰り出される「素人」質問に、時間いっぱい(実際は予定の30分を超えて)答えていただきました。担当してくださった医師は、ちゃんと事前に私の病院から提供された資料を読み込んでくださっているようでした。簡単に要約すれば、

  • 現在の治療方針は間違っていない(自分の病院でも同じ治療をする)
  • 老人なら移植に向かわず時間稼ぎをすることもあり得る
  • 治癒を目指すならば、再移植しかない
  • 寛解に入った時が移植のチャンス(なお、そうでないという説もあるという言葉もあった)

今後の治療方針

切れ味の良い新しい薬がなくなったので、寛解に入れるためにはトラディショナルな化学療法に頼ることになると考えられます。でも、私の白血病フィラデルフィア染色体陽性なので、チロシンキナーゼ阻害薬(TIK)が一定の効果を持っています。私の場合はT315Iという変異が入っているので、効果があるのは「ポナチニブ」だけなのですが、当面はこれをしっかり服用して、どこまで効果を挙げられるか、こまめに観察するということになります。

もしこの薬に十分効果があって、寛解が目指せそうならばそれを続け、その後移植に向けた前処置に向かうし、ダメならどこかのタイミングでトラディショナルな化学療法に切り替えるのだと思います。

 

さあ一気に選択肢が限られて来ました。これが終わりの始まりなのかな。