Ph+ALL日記

フィラデルフィア染色体陽性白血病と闘うIT労働者の記録

再移植のための入院開始〜再移植へのカウントダウン

入院の際には、前日に必ずコロナのPCR検査を受ける。私は月曜日に入院予定だったので、前の週の金曜に受けた。当然陰性であった。しかし週末に軽井沢に旅行に行ったので、入院した際には病院は私が陽性であることを仮定した対応を取ることにしたそうだ。では金曜日のPCRは不要だったんじゃないかと思うが、まあ仕方ない。

でもこれがとても快適であった。個室があてがわれたので、個室の中では音楽も聴き放題だし、電話もし放題だし、仕事もし放題だ。問題があるとすると、廊下に出られないので、お茶が汲みに行けない。ミネラルウォーターは少ししか持ってこなかったので、仕方ないから看護師さんに給湯器からお湯を汲んできてもらい、紅茶や緑茶を入れて飲んだ。

検査、検査、検査

最初にいつもの骨髄検査(マルクと呼ばれるやつ)。次に腰椎穿刺(腰の高さの背骨の隙間から針を刺して検査のための脳脊髄液を採取したり、中枢神経内に抗がん剤を注入したりする)を実施。腰を丸めて腰椎の間から針を刺す。レントゲン・CT・MRIなども実施。

入院後1週間経って結果が大体出揃った。どれもとても良好であった。骨髄のFISH検査 (私由来の増結細胞が持つXY遺伝子の数), PCR検査 (白血病細胞が持つBCR-ABL遺伝子の量) もこれまでの最低、髄液検査でも白血病細胞は1個しか見つからなかった。

薬疹の原因が、現在効果のある唯一の薬であるアイクルシグであるかもしれなかったので、その減量していたから、効果が減ってしまっているのではないかと少し心配だったのだが、幸い杞憂であった。このタイミングで再移植するのだ。今しかない。

薬疹のその後

以前の記事で薬疹が出た話をした。退院している間もしばらく続いていたが、徐々に改善してきた。アイクルシグは減量したし、入眠剤はやめたし、肝臓の薬は切り得たし。結局どの薬が原因だったのか不明。

皮疹は消えたけれど、その後遺症として手足・尻の皮膚が死んで剥がれ落ちて、パーティクルがポロポロ落ちるようになってしまった。保湿にはヒルロイドのローションと軟膏を使っていたが、もっと油分があるものを使った方が良いということで、ユベラという粘度の高いものを使ってみることになった。このユベラは15°C以下で保存しなければならないので、ベッドの横のテレビカードで動作する冷蔵庫に入れておく。

毎日、起床後・シャワー後・就寝前の3回、全身をこれらで保湿する。

膝痛のその後

膝の痛みは、プレドニンステロイド)が効いている限りは再発してこなかったが、移植前にはプレドニンをやめなければならない。ステロイドは元々自分の体の副腎から分泌されているホルモンで、薬を飲んでいる間は、この副腎はステロイドの分泌を休んでいる。急に薬をやめると、副腎が急にはステロイドの生成分泌を始めないので、ステロイドが体内から不足してしまうという事態が起こる。これを避けるために、薬からの離脱は徐々に行う必要がある。これから量を減らしていくのだが、それが一定量を下回った時に、また痛みが発生する恐れがある。これに対処するために、消炎鎮痛薬としてカロナールが処方されているが、まるで効果があるように思われない。そこでもっと強力な鎮痛剤を用意してくれているようだ。使わずに済むと良いのだが。

再移植へのカウントダウン

そこで予定通りの日程で、移植の前処置に入り、これから10日前後で臍帯血移植に進む。前にも少し書いた通り以下の日程で進む。移植日 = Day 0 としてそれの前をマイナス、後をプラスで表す。

前回の経験では、途中激しい吐き気と下痢に苦しめられたような気がするが、どの程度大変だったかは、都合よく記憶から消えている。人間は生きていく為に、そのようにできているんだな、多分。

全身放射線放射 TBI

TBI (Total Body Irradiation; 全身放射線照射)は、初回の移植の際は2日間に渡って12Gy(グレイ)という量を浴びた。今回は1/3量の4Gyを浴びるので1日ですむ。午前午後に分けて実施するが、1回の時間が短い。

ところでGy(グレイ)という単位は放射線が充てられた物質が取り込むエネルギーのこと。福島原発事故でSv(シーベルト)という単位をよく耳にしたと思う。Svは放射線に対する人体への影響を表す単位で、同じ放射線量でも放射線の種類(X線γ線β線α線)によって人体への影響が異なる。今回浴びるX線の場合は、1Gy = 1Sv ってこと。

この都内の環境放射線量って0.1μSv/hとかいうレベルなので、今回浴びる放射線の人体への影響は 4Svだから、4Sv÷0.1μSv/h を計算すると、自然環境で浴びる4566年分の放射線を1日で浴びるって計算になる。途方もない。

TBIはレントゲン(X線)を身体中に浴びるってことで、普通は胸やお腹をピッタリつけて撮影するレントゲンの機械に対して、ちょと離れたところに横向きに寝て、じっとしていればよい。前回は首や肺といった体が薄くなっている部分には、アクリル板などで遮蔽して照射量を調整した。事前にCTやレントゲンで計測されたが、何を計測して、それがどのように使われるのかまでは理解していない。

照射中は、じっとしていなければならないので、iPhoneに好きな曲のプレイリストを作って、音楽をランダム再生してもらおう。

抗がん剤

前回の治療中に使った抗がん剤で私の腎臓は壊れたし、小脳に副作用も出た。再移植はセオリーが違うのか、前回の副作用を考慮したのか、選択の理由までは理解していないのだが、現在の私の状況に一番マッチしたものということで、フルダラアルケランという、前回とは違うものを選択することになった。

リンク先にも書かれているが、どちらも腎臓に負担のある薬だ。私のクレアチニンリアランスは腎症ステージ3レベルなので、投与量は直前に蓄尿(尿を24時間貯める)をして計測し、調整する。

アルケランという薬の副作用として、粘膜障害が起こるらしい。中でも口内炎を予防するために、「クライオセラピー」というのをやる。立派な名前がついているが、氷を口に含んで口内の血流を抑制するというだけなのだが。

どちらの抗がん剤もとても毒性が強いようで、ご多聞に漏れず、多くの副作用が列挙されている。下痢・吐き気は当然のこと、心臓・腎臓・肝臓への影響など。TBIの影響下での投与なので、薬で死んじゃうんじゃないかしらとさえ思える。

 

TBIを始めたら、もう後戻りはできない。後2日だ。