Ph+ALL日記

フィラデルフィア染色体陽性白血病と闘うIT労働者の記録

ベスポンサ投与とその後の経緯

前回の経緯でベスポンサを治療薬に選択し、5月の連休中に最初の一回目を投与しました。その投与の様子とその後の経過を書いていきたいと思います。

ベスポンサの投与

ベスポンサはCVからの点滴で投与します。前投薬(抗アレルギー薬など)を30分かけて点滴した後、続けてベスポンサを1時間で投与して、それで終わりです。これを1週間に一回、3週繰り返して1週休む、という4週間が1サイクル。効果を見ながら、効果があれば6サイクルまで続けることができ、効果がなければ3サイクルまでで投与を中止する、という決まりになっています。

私の場合、一回目の投与はあっけないほど簡単に終わりました。気分が悪くなるようなこともなく、あっという間に投与は終わりました。

敢えて挙げるなら、お腹の動きが悪くなった気がして、前の週から少し便秘気味だったのもあって、お腹が張ったというくらい。リンゼス*1プルゼニドという緩下剤を適時飲んで、便秘解消に努めました。

肝心の効果ですが、投与前に末梢血中に1%から2%見つかっていたBLASTは、投与後1週間で0%になり、ベスポンサはよく効いているように思われます。

肝臓に副作用

当初、血液検査では何の副作用の兆候がないまま3日過ぎたのですが、5日目あたりから肝臓の数値AST(GOT), ALT(GPT)の値が急に上がり始め、通常の基準値の上限の2.5倍を超える値になってしまいました。2.5倍以下にならないと、ベスポンサを継続できないという決まりがあります。肝臓を保護するために強力ネオミノファーゲンの投与(CVから注射)を受けて様子を見ました。

しかし二回目の投与が予定されている1週間後も正常範囲上限の2.5倍以下に下がることはなく、二回目の投与を延期することになりました。2日後、4日後にも同じ理由で投与ができず、この状態がまるまる1週間続き、結局二回目の投与をスキップすることになりました。

最初の投与から2週間後、ついに肝臓の数値が規定の範囲に入ったので、ベスポンサの二回目の投与を行いました。投与の方法は一回目と同じですが、量が少し少なくなっています(1回目の5/8)。前回同様、副作用が懸念されましたが、今回は肝臓の数値も全く上がらず、正常範囲に収まっています。初回投与後の、少し遅れて出てきた肝臓悪化はなんだったのだろう。

疑いとしては、当時便秘でリエンザを服用していたのが関係しているのかもしれない。今回は便秘は解消して、むしろ下痢気味になっているので、リエンザは服用していません。

1サイクルの中で、二回目の投与ができなかったが、一旦はこのサイクルをこれで終えて、2週間後に骨髄検査にて効果を確認することになった。

1度目の投与で肝臓に強めの副作用が出たので、ベスポンサが今後使えなくなってしまい、切り札が一つなくなる、というのが懸念だったのですが、2度目の投与では(今のところ)問題ないので、今後もベスポンサが使えるという期待が残ったのは、とてもありがたい。

再発の原因判明

この間に、入院直前に実施した骨髄検査の遺伝子解析の結果が出てきました。

私の造血幹細胞が持っているフィラデルフィア染色体上のBCR-ABL遺伝子。これが白血病細胞の増殖させる原因なのですが、この遺伝子が作るタンパク質の働きを阻害する薬、ダサチニブ(スプリセル)が、これまでとてもよく効いていました。

しかし、今回の解析の結果、この遺伝子にT315I*2という変異が入っていることがわかりました。この変異が入っていると、イマチニブやダサチニブに耐性を示し、これらの薬の効果がなくなります。このため、ダサチニブを飲んでいた私の白血病細胞は急増し、末梢血の検査でもBLASTが50%以上も見られる状態になっていたのでした。

このT315I変異がある時に効果のあるBCR-ABLの働きを阻害する薬は、今のところポナチニブ(アイクルシグ)だけということになります。

ポナチニブをかつて服用していたことがあるのですが、胸が痛くなる副作用が出て、一度病院に駆け込むことになりました。色々検査してもらったのですが、原因はわからず、ポナチニブの使用は中止することになりました。

今後の治療方針を決めていく中で、今後ポナチニブが使えるかどうかというのは、大きなポイントになりそうです。副作用をコントロールして、ポナチニブを使うことができれば、このまま造血幹細胞移植に向かうのではなく、ポナチニブを飲み続けることで、病気が抑えられ、その間、普通に生活することができます。

やはり、造血幹細胞移植を行うとなると、抗がん剤などによって、体内にある造血幹細胞を一旦全て殺す必要があり、この前処理の負荷はとても大きく、前回の移植で痛めた腎臓がもたないと考えられるので、今後の人生のQoLを考えるとできれば避けたい、少なくともできるだけ先送りにしたいというのが、今の所の希望です。

*1:最初は酸化マグネシウムを使っていたのですが、血中のMg濃度が上がってしまったので、リンゼスに切り替えました。

*2:315番目のアミノ酸がThreonineからIsoleucineに変わっている、という意味。