Ph+ALL日記

フィラデルフィア染色体陽性白血病と闘うIT労働者の記録

再々々発の治療方針決定&最初の2週間

骨髄検査&フローサイトメトリー

入院してまず、骨髄穿刺による骨髄液の検査を行った。顕微鏡目視によるBLASTの数やPCRによる遺伝子検査の結果は白血病細胞の割合として10%程度で、入院前の検査からほとんど増えていなかった。つまり、ポナチニブには一定の効果があって、白血病は1ヶ月ほど進行していなかったということになる。

骨髄液内の白血病細胞に対してフローサイトメトリーという検査が行われ、白血病細胞の表面にどのようなマーカーが存在するかが確認された。

前回の入院で使用した「ベスポンサ」はCD22という表面マーカーを持つ白血病細胞を標的とする薬であった。今回のフローサイトメトリーの結果、私の白血病細胞のうちCD22を持つ細胞はほぼ駆逐され、存在しなくなっていた。つまり、ベスポンサはとても良く効いたということだと思う。しかし逆にいうと、もうすでにCD22を持つ白血病細胞は存在しないので、またベスポンサを使ったとしても、もはや効果がないということだ。

フローサイトメトリーの結果、CD19を持つ白血病細胞の大きなクラスタが検出されたので、CD19を標的とした「ビーリンサイト」は効果が期待できることがわかった。従って今回の入院では、このビーリンサイトを使用することになった。実はこれは、新しい白血病の治療法として、現在私が利用可能な唯一の治療法である。この治療が使えなくなったときには、旧来の化学療法くらいしか選択肢がない。

ビーリンサイトによる治療

さて、ビーリンサイトとはどのような薬なのか。

以前のエントリにも書いたが、白血病がん細胞に生えている「CD19」というマーカーと、患者本人が持つ正常な免疫細胞(T細胞)には生えている「CD3」の橋渡しをしてくれる抗体で、この橋渡しのおかげでこれまでT細胞に見逃されていた白血病細胞に患者自身のT細胞がくっついて、がん細胞を破壊するという仕組みらしい。この薬を4週間持続的に点滴静注した後、2週間休薬するというのが1サイクル。これを最大5サイクル繰り返すんだとか。大体1サイクルで、なんと7〜800万円かかるらしい。

私の担当医によると、3サイクル程度実施して効果を見るという方針で入院治療が始まった。つまり全部で16週間かかるから、懲役4ヶ月ってことになる。途中休薬時には仮釈放が認められるかもしれないが。最初の入院依頼の長い治療になりそうだ。費用負担の面では、3割負担の健康保険が適用になっても、200~240万円/サイクル x 3サイクル = 7~800万円の自己負担なり。高額医療制度の利用が欠かせない。

ビーリンサイト投薬スタート

まずは一通りの検査として、末梢血、尿、便、胸部レントゲン、胸腹部CT、MRI、心電図、心エコーなどを実施。

さらに中央静脈カテーテル(CV)を挿入。今回は血管のどこかが狭くなっているとかで、1回失敗して翌日再チャレンジすることになったが、2回目でカテーテル留置に成功。このポートからビーリンサイトを継続的に28日間点滴により注入することになる。

最初の1週間は24時間あたり9マイクログラムを連続注入し、残りの3週間は24時間あたりの量が28マイクログラムに増える。開始直前には副作用として考えられる、サイトカインストームを抑えるために、ステロイドなどを静注にて前投薬する。反応状況をリアルタイムで観察するため、心電モニターを24時間装着する。

ビーリンサイト投薬1日〜3日目

朝10:30から投薬開始だが、その日の夜にはひどい悪寒が始まり、布団を被って丸くなるが手足がとても冷える感じがする。熱を測ると39度近い高熱だ。夜中ではあるが看護師を呼んで、事前に準備されていたステロイドを点滴に追加してもらったところ、明け方にはすっかり熱が下がった。医師によるとこれはどうやら、10%ほど存在した白血病細胞が一気に破壊されることにより生じる、腫瘍崩壊症候群であるとのこと。つまり薬が効いているということだ。

ビーリンサイトの主な副反応としては、以下のようなものがあるそうだ。

  • 神経学的事象:  ビーリンサイト特有の副反応で神経系に問題が起きて、頭痛・不眠・めまい・手足の震え・眠り込んでしまう・不安・軽度の意識混濁・興奮状態・幻覚・妄想・失語症などが発生することがある。
  • 感染症:  これは白血病の薬のほとんどが持つ骨髄抑制により免疫が下がり、サイトメガロウィルス感染・肺炎・敗血症などの発生リスクがある。
  • サイトカイン放出症候群: T細胞が活性化することで、生体内活性物質(サイトカイン)が放出され引き起こされる症状で、吐き気・頭痛・胸痛・動悸・発疹・発熱・鼻血・耳鳴り・呼吸困難・意識低下・嘔吐・寒気・尿の減少などなどが起こり得る。

結構怖いことが書いてあるな。特に神経学的事象は不安を煽る。副反応についてより詳しく知りたい方は、このページを参照してください。

翌日2日目はすっかり薬に慣れたのか、熱も頭痛もなく、静かな1日になった。しかし3日目には1日目と同様に、夜中にひどい寒気と高熱が出ることになる。こちらも副作用どめのステロイドを点滴に加えてもらい、程なく治った。

それ以後は、薬に慣れたのか、壊れる腫瘍細胞の量が減ったのか、目立った反応はありません。24時間つけている心電モニターでわかるのですが、脈が普段より速く、少し歩いたりWeb会議で話をしたりすると、120~140拍/分に上がることがありました。

ビーリンサイト2週目~

その後目立った副反応はなく、2週目に突入。2週目からは(これまで8マイクログラム/日)だったものが28マイクログラム/日に増量されます。この増量に伴って新しい反応が出るかどうか、少しビクビクしていましたが、何も起きませんでした。

あえていうと、お腹の動きが弱くなって、便が出にくくなり、食べたものでお腹が張ってきました。下剤(酸化マグネシウムプルゼニド)を適時飲みながら調整します。

速くなりがちだった脈も落ち着いてきました。あとはじっと待つだけです。1サイクル(4週間)経ったところで骨髄検査をして、効果を確認する予定です。

ところで、9マイクログラムとか28マイクログラムってどうやって測るんですかね。多分何かに溶けていて、その溶媒の量を測るんでしょうね。

 

読み返してみると、語尾に統一感がないな。ひどい文章だ。