Ph+ALL日記

フィラデルフィア染色体陽性白血病と闘うIT労働者の記録

点滴の交換

2016年12月28日に入れた点滴静脈注射*1がそろそろ限界というか寿命に来た.ちょっと痛々しいけれど現在の状態がこれ.

f:id:x010:20170107165036j:plain

痛くも痒くも無いのだけれど,血が滲んでしまっている.

現在のところ,この点滴は,

  • 水の補給(抗がん剤が細胞を壊し,その老廃物が腎臓を痛めないようにするために,尿量を確保する)
  • 肝臓の薬の投与

のためだけに使われている.肝臓の数値が落ち着いているのと,口から水分は十分飲めているということで,一旦抜いてしまうことに.

明日,別の場所に刺し直しかな.

親娘のHLA適合性

骨髄移植にしろ,臍帯血移植にしろ,移植を受けるためにはHLA*1の適合度が高い*2ドナーを見つける必要がある.しかしHLAは非常に複雑な過程で決定し,数万種類存在するといわれていて,偶然2人のHLAが一致する確率は数万分の1から数百万分の1である.

私には20歳の娘がいる.前の病院で「念のため」娘のHLAを簡易検査してもらっていた.

面倒な議論を省けば(実際,とても面倒らしいのだが),メンデルの法則*3で考えて,子供には夫から半分,妻から半分,HLAが遺伝している.ということは親娘のHLAは半分ほどが異なっている考えるのが自然である.夫婦でHLAがマッチすることはとても稀なのだから.娘の検査は本当に「万一」「念のため」だった.同様の議論で,兄弟のHLAがマッチする確率は1/4になる.

それがどうしたことか驚くべきことに,娘と私のHLAが偶然よくマッチしているらしいのだ.もちろん,現時点ではまだ可能性の一つでしかないが,可能性があることに感謝するしかない.実際,娘なので私と大きな体重差があり,私が必要としている絶対量が取れるかといった問題もあるらしい.

当然上記のHLAが合わないという理由で,親子間の移植は事例が少ない.病院としては,まだ第1選択は兄弟であるとのことである.入院16日目 - Ph+ALL日記 で記した弟のドナー適格性の話も進めていくことになる.

病床オフィス

昨日再び職場の上司に来訪頂いた.

その際,職場の新年の新しい体制とか役割変更の情報アップデートに加えて,写真のマッサージクッション*1をお見舞い品として頂いた。

f:id:x010:20170105165630j:image

これを装備して,完璧な病床オフィスが完成した.手の届く範囲になんでもあってとても快適.

f:id:x010:20170105165638j:image

ステロイドのテーパリング

昨日,2017年1月4日(水)から,ステロイド剤の漸減(tapering; テーパリング=徐々に減らしていくこと)を開始.

これまで110mg/日 (5mgの錠剤を朝11錠,昼11錠) だったものを,50mg/日に半減.2日後にさらに半減…と減らして行く.急に止めないのは,本来ステロイドを体内で生産する役割を持っている副腎が,外部から大量のステロイドが供給されているために休止状態になっている.副腎が目覚めるのには時間がかかるので,ゆっくりと減すことで,自然なステロイドが供給されるようにするためだそうだ.

ステロイドはリンパ球を破壊すると同時に,体内の炎症を抑えたり食欲や元気を引き出していた訳なのだが,それが減っていく過程で,怠さや精神的な落ち込みを感じることもあるらしい.しかし,今の所はそのような反応は一切感じられない.

また,ステロイドの副作用として,コントロールされてはいるものの糖尿傾向や便秘傾向が出ていた.肌があちこちカサカサになって,特に手先を怪我しやすかったり,赤切れになりやすくなっているのもステロイドの所為だと考えられる.テーパリングの過程でこれらの症状が解消・低減することが期待される.

自己免疫が復活してくるはずなので,十分ステロイドが減ったら無菌病棟の外に出て,6歳の息子に会えるのも楽しみ.

テーパリングとの関連の有無を理解していないが,ステロイドが起こす副作用の胃潰瘍を防止するためにこれまで服用していた胃薬,タケブロン(ランソプラゾール)*1を有名なガスター*2に変更.

tapering っていろんなところで使う言葉だな.学生時代は競技前にトレーニング量を減らしていくという意味で使っていた.ググると経済用語として金融量的緩和の削減ってコンテキストで使われることが多いようだ.先を細める,弱めるという普通の言葉だから当然なのだが,専門用語のように使うケースが良くある気がする.

同病棟の患者さんたちとの会話

当然,同じ病棟には同じような病気の患者さんが入院している.そんな中,私が最も新参者なので,周りの皆さんは私より治療が進んでいて,今後自分がどうなるのか知る上で参考になる.

他人の個人情報に当たるので具体的なことは書けないが,

  • どんな仕事をしていたのか
  • 何をしている時にどんな症状が出たのか
  • どのように診断(時には誤診)されたか
  • 診断された時の気持ちや家族の反応
  • どうしてこの病院にたどり着いたか
  • どのような薬が効いたか・効かなかったか
  • どんな副作用が出たか
  • どういった種類の移植を受けたか
  • 移植後の経過
  • 治療費の話
  • 他の病院との違い(特に看護師さんの対応)

などなど.多岐にわたる話ができた.

新薬「ポナチニブ」

そんな中で,Ph+ALLに関する新薬が承認されていたことを知る.

  • 第1世代のチロシンキナーゼ阻害薬(tyrosine kinase inhibitor; TKI)*1がイマチニブ.国内承認2007年1月.
  • 第2世代のTKIが私が現在服用しているダサチニブ.国内承認2009年1月.イマチニブが活性より不活性のBCR-ABL融合タンパク質に結合しやすかったが,ダサチニブはどちらとも結合する.
  • 第3世代のTKIとしてポナチニブ*2が国内で最近承認された*3フィラデルフィア染色体から生じるbcl-abl遺伝子にT315iなどの点変異*4があると,従来のTKIに対して抵抗性を持つが,ポナチニブはこのような難治性の白血病に対しても効果を持つ. 

シャットダウン・プロセス

当初思いついたシャットダウンプロセス*1,つまり治療がうまくいかなかった時に事後整理するプログラムは,だいたい完成した.

生存確認系(自分が生きていることを確認する処理),メッセージ系(関係者にお知らせする処理)はすでに動作していて,テストも十分できたと思う.

問題は破壊・消去系の処理.

  • 自分のサーバー (on-prem & cloud) の破壊は比較的容易だが,テストはしにくい.本当に試すと壊れちゃうからね.壊す順番も大事だな.壊す動作が途中で止まらないようにしないといけない.
  • 外部サービスのアカウント消去は,そもそもAPIがないので出来そうもない.例えば,twitter のアカウント消去は,PCサイトにログインして…と*2やらねばならぬらしい.つまりは綺麗な掃除は出来ない.諦める.

最後のチューニングとして,生存確認からシャットダウンまでの猶予時間をどれくらいに設定するか.現在は7日間と長めにとってあるが,それが妥当かどうかはわからない.

さて,本件はこれで早々に決着にして,前向きな方向に頭を使おう.

貯尿

入院以来,尿の量を毎回計量カップで測って記録している.

明日1/3の朝から明後日1/4の朝までの24時間は,量を測るだけでなく,尿の現物をタンクに貯めていく.

尿は毎回少しずつ異なるわけだが,尿検査のようなサンプリング検査では全体像をとらえ切ることができない.具体的に何を測るつもりなのか聞いていないが,1日分の尿を溜めることで,全体像を把握するのだと思う.例えば糖の総量とか?

水を点滴していることもあり,糖尿傾向のため喉が渇きよく水を飲むこともあり,大量の尿 (4リットル/日以上) が出ている.

あれ,病院内で蓄尿って呼んでる人もいるな.タンクには貯尿と書いてある.