Ph+ALL日記

フィラデルフィア染色体陽性白血病と闘うIT労働者の記録

寛解に到達

まず朝イチに血液検査.以下の結果を得る.

  • AST(GOT): 134 (H)
  • ALT (GPT): 175 (H)
  • ALP: 443 (H)
  • LDH: 302 (H)
  • CRP定量: 3.71 (H)
  • WBC: 21.9 (L)
  • RBC: 288 (L)
  • HGB: 9.5 (L)
  • PLT: 15.7
  • RETI%: 0.56 (L)

肝臓関係 (AST, ALT, ALP, LDH) が軒並み悪化している.肝臓の薬(強力ミノファーゲン)を静注する.

CRPの値が少し下がった(前回4.76)がまだ高い.頭痛,発疹の影響と考えられる.

白血球,赤血球は少ないが,血小板は正常値を示している.

骨髄液検査(マルク)

11時.昼飯前のひと仕事として,およそ一ヶ月振りの骨髄穿刺*1.腰骨(腸骨)に太めの注射針を刺して,骨の中の骨髄液を抜き取って検査する.前回は慈恵医大病院で実施したので,こちら東大医科学研究所付属病院で受けるのは初めて.

自室で行うのかと思ったら,二人部屋だからという理由で,歩いて10歩くらいの別室の処置室で行うことに.

前回同様,うつ伏せに寝て,腰の一番骨が出ているあたり(左右どちらかの,割と端の方)の場所を決めて,その周囲を消毒.周りに紙を敷いて汚れないように養生.まずは皮膚の麻酔を注射 (これは麻酔が効いてないので痛い).続いて,骨表面の麻酔を注射 (これも注入時は痛みを感じる).麻酔が効くのを少し待って,骨の中に針を刺す.骨の中に届いたら,注射器で引いて骨髄液を採取する.

気持ちいいものではないが,上手にやっていただいたのか,ほとんど痛みはなく,綺麗にサンプルが取れたようだ.前回はこの「穿刺吸引法」に加えて「針生検」も行ったのだが,今回は十分な量が吸引できたので,針生検は行わないことになった.

術後は絆創膏を貼って,その上をガーゼで圧迫し,30分間は仰向けになって自分の体重で圧迫して止血する.

午後3時すぎに,担当医が結果を伝えに.「今サンプルを顕微鏡で見てきました.200個の細胞を観察して,白血病細胞は0個.一つもありませんでした.寛解です.」

寛解(remission)*2は病気による症状が消失している状態ということだが,治癒したわけではない.白血病寛解には幾つもレベルがある.

  • 血液学的寛解 (Complete Hematological Remission; CHR): 末梢血から白血病細胞が消え,脾腫などの臨床症状が消えたら
  • 細胞遺伝学的寛解 (Complete Cytogenetic Remission; CCyR): 骨髄細胞のうちPh染色体を持つ細胞が見つからなくなったら
  • 分子遺伝学的寛解 (Complete Molecular Remission; CMR): bcr-ablを持つ白血病細胞が見つからなくなったら

調べるともっとたくさん出てくるのだが,CML用だったり,AML用だったり,リンパ腫用だったりして,どれがPh+ALLに適用されるべきものかよくわからない.

ある資料*3によると,治療前に体内にあった1兆(10の12乗)個のがん細胞が, 血液学的寛解では1/100の100億(10の10乗)個に減少している.細胞遺伝学的寛解だと1/1000の10億(10の9乗)個,分子遺伝学的寛解だと1/100万の100万(10の6乗)個になるということだそうだ.

慈恵医大病院の担当医は,入院当初腫瘍細胞の重さが1kgくらいあると言っていたので,それが1/1000になったのだとすると,今の重さはたったの1gくらいだということになる.副作用の多い所謂抗がん剤を使用せずに,ステロイドとダサチニブの服薬だけでここまで効果が出るということは,すごいことだと思う.

担当医の説明では,細胞の周りマーカーを調べることで,目視では区別がつかない腫瘍細胞を分別することができるので,マーカーを使った検査と,遺伝子を調べることで白血病細胞固有の遺伝子 (bcl-ablなど) の有無を使った検査を行うとのことである.非常に検出感度の良い検査らしいが,これらの結果は来週になるらしい.

原因不明の発熱・発疹

今日から2日前,2017年1月17日(火) の朝食後にスプリセルを服用して,2016年12月14日に始まった35日間の寛解導入治療が終了した.今後は骨髄液を採取して,治療の成果を確かめ,2サイクル目の地固めに進む予定だ.

ちょうどこの日の朝から,原因不明の発熱が始まってしまった.1/17の朝4:00頃に悪寒で目が覚める.寝ぼけながらも熱を測ったところ38.3℃.寒気が酷いので上着を着て布団の中で丸まって寝る.看護師を呼ぶ気力もない.看護師には朝起きてから報告.熱があると頭痛がする.目の奥の痛みとして感じられる.

原因の追求を開始。

娘がインフルエンザに罹ったこともあり,まずはインフルエンザが疑われる.直ぐには検査できないので,12時間以上たった午後に検査するも結果は陰性.

CTで肺にポツポツと小さい影が見えるのが前から気になっていた.呼吸器の専門医によると,最初に疑うべきは結核などの抗酸菌感染であるとのこと.結核菌がいるかどうかの検査は通常痰で行うのだが,痰が出ないので胃液を採取して調べることに.胃液の採取は,胃カメラのように細いチューブを鼻から胃に通して,注射器で吸うって行う.胃カメラはカメラが付いているので先端を見てどこを通れば良いか制御できるが,チューブはただのチューブなので,気管と食道の分岐点を通すのが大変であった.涙を流しながら苦労して採った胃液だが,結果は抗酸菌陰性であった.

CTで見つかった肝臓にある影も疑われている.これは恐らくは血管腫(良性腫瘍)であるとの見立てだが,そうであったとして,稀に膿が溜まって発熱の原因となることがあるらしい.詳しい状態をエコー検査とMRIで確定させる方針 (今日1/19時点で未実施).薄い可能性に思われるが,一つ一つ潰していく.

翌日 1/18(水)

2017年1月18日(水)も朝から発熱.10:30には37.8℃.13:50には38.1℃.熱が高くなったので夕方から抗生剤(ゾシン: ペニシリン系の抗生剤)*1を点滴することに.

夕方,医師に首回りに発疹が出ていると指摘を受ける.抗生剤へのアレルギーかもしれない.抗生剤を別のもの(マキシビーム: セフェム系の抗生剤)*2に変更.

改めてインフルエンザの検査を行う.結果は同じで陰性であった.

日中は37℃台で推移.夜になって発熱は治まった.

翌日 1/19(木)

朝6:50の最初の検温では37.6℃と熱があったが,その後は36度台.今日日中は発熱はなかった.

しかし,発疹は収まるどころかむしろ広がり,腹・背中・首・耳が赤くなり,首や耳は触ると熱を持っている.シャワーを浴びて温まった際には,手足にも広がるのが確認できた.このためアレルギー止めの薬(ポララミン: 抗ヒスタミン薬)*3を点滴に混ぜて静注.しかし効果があったようには見えず.相変わらず赤い発疹は消えない,

発熱の原因を分類すると,以下の3種類が考えられる.

  1. 細菌・ウィルスによる感染症
  2. 薬剤の副反応
  3. 腫瘍熱

これまで1を想定してきた.今日1日発熱がなかったことから,原因は何かの細菌で,抗生剤が奏効したのかもしれない.

一方,発疹が現れたことから2の可能性も出てきたが,抗ヒスタミン薬は効果がなく,単純なアレルギーではないのかも.抗生剤が疑われたが,まず発熱があったから抗生剤を使ったわけで,抗生剤の副反応が元々の発熱の原因であることはあり得ない.

最後に,入院前の症状がそうであったように,白血病の腫瘍細胞によって発熱が起こっている可能性もある.ただ,その場合は日中に発熱するより,夜間に出ることが多いらしい(これは私自身の経験と一致する).これは明日実施する予定の骨髄穿刺により骨髄液を調べ,白血病細胞がどの程度減っているかを調べることで,原因となり得るかが分かるはずである.腫瘍熱であったということは,最初のサイクルの治療が十分な効果がなかったことを意味する.

家族の風邪

間の悪いことに,娘が38.6°Cの高熱を出してしまった.インフルエンザの可能性もある.せっかく今日明日の2日間帰宅出来るはずだったのに.

朝から外泊する前提で,追加の血液検査と好中球を増やす皮下注射*1を受けていたのだが,担当医2名とお話しした結果,本日の帰宅は辞めることとなった.

娘のインフルエンザ検査の結果を見るのと,彼女をゲストルームに隔離する前提で明日帰宅するという提案をしてみた.果たして私は家に帰れるのだろうか?

検査結果

血液検査の主な結果:

  • ALT(GPT): 48 (H)
  • ALP: 430 (H)
  • CRP定量: 1.04 (H)
  • WBC: 13.9 (L)
  • RBC: 338 (L)
  • HGB: 11.2 (L)
  • PLT: 12.8 (L)

この後,頭部MRIを撮る.何日か前から軽い頭痛があり,目を大きく動かすと痛みがある,それが炎症の正体かもしれない.

インフルエンザ陽性

娘はインフルエンザ陽性でした.インフルエンザの病人をゲストルームに隔離するのは良くないだろうということで,今日は帰らないと決めた.病院でゆっくりしよう.

外泊許可 (2)

血液検査の詳細が出た.

  • NET(好中球): 10.4

ギリギリ1000を超えていたが,やはり予防的に抗生剤を服用.さらに明日再検査しつつ,好中球を増やす薬を使う予定.

これで2泊するつもりでいるが,2日間,家で何をしようか?

外泊許可

今日で入院生活まるまる1ヶ月.

ステロイドとスプリセルを用いた寛解導入の35日間の治療がもう直ぐ終わる.どのくらい深い寛解が得られたかは,骨髄穿刺をして調べなければわからないが,その前に血液検査の結果から現在の状況が悪くないので,少なくとも1泊の外泊を許可された.明日のMRIの検査が終わったら,一晩自宅に戻ることができる.

今朝の血液検査の主な結果:

  • ALT: 53 (H)
  • WBC: 16.5 (L) → この中身が問題.正常な好中球の数を調査中.
  • RBC: 316 (L)
  • HGB: 10.5 (L)
  • PLT: 14.1
  • RETI%: 1.22%
  • CRP定量: 0.28 (H) → なんらかの炎症が起きていることを示す

1650ある白血球のうち,どれだけ意味のある好中球がいるかが重要らしい.500を切ると感染症の予防的な対策として抗生剤を投与するし,1000を超えていれば外泊可能なのだそうだ.手元の結果にはその数値がまだ含まれていない.

担当医と2泊できるかもね…という話になり,念のため明日も血液検査し,抗生剤に加えて白血球を増やす薬を投与するか決めることに.

どうせ自宅は近いので,調子悪かったらすぐに戻ってこれますよっと.

体重減少

昨日今日と67kg台で変化なし.下げ止まった感じ.

テーパリングの影響?

服薬量の変更・中止

以下のように処方薬の中身が少し変わった.

  •  プレドニン: ステロイド.当初110mg/日だったものを → (1/4から) 50mg/日 x 2日  (1/6から) 25mg/日 x 2日  (1/8から) 10mg/日 x 3日間と漸減させてきた.今日2017年1月10日が服用最終日.
  • フェブリク錠: 尿酸の量を減らす薬.これまで20mg/日だったが,尿酸値に問題はなくなったので中止に.
  • アムロジピン: 血圧を下げる薬.血圧が100mmHgを切ることもあるので中止 に.
  • 強力ネオミノファーゲンシーP静注: 肝臓の薬.肝臓の数値も安定しているので,中止に.

以下はこれまで通り.

  • スプリセル: bcr-abl分子標的薬.同量 (140mg/日) を継続
  • ジフルカンカプセル: 真菌感染症予防.同量 (200mg/日) を継続.
  • バクタ配合錠: 細菌感染症の予防.同量 (1錠/日) 継続.
  • ガスター: 胃酸を抑える薬.同量 (20mg/日) 継続.
  • ナボロン錠 : 起床時朝食前に服用 (毎週水曜日).同量 (35mg/週) 継続.
体重減少

このところ目に見えて体重が減っている.ステロイドのテーパリングと関係しているのだろうか.

下図は発症しただろう2016年10月ごろから今朝までの体重変化.一貫して減っているが,ここ1週間は角度が急だ.

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入院時点 (12/12) に 72.1kg だった体重が,テーパリング直前の1/3に70.3kg.1/8に68.3kg.今日1/10は66.8kg.体重変動の大きな要素は水分だと思われるので,あまり細かな変化を見ても仕方がないが,ちょっと急激なので継続して観察する.

今後の予定

担当医から聞いた今後の予定の概略のメモ:

中枢神経は髄膜*2というタイトな膜で覆われていて,抗がん剤は種類によってはその膜を透過できない.どうもダサチニブは髄膜を透過しないらしい.がん細胞が脳髄内に逃げ込んでしまうと,そこから中枢神経系白血病として再発してしまう恐れがある*3.このための検査を行うとともに,脳が浮かんでいる髄液内に直接抗がん剤を注入するのだそうだ.

なかなか恐ろしい話にも聞こえるな.この処置のためにサインしなければならない同意書があるらしい.

いい話としては,1日外泊許可が出る日があるそうだ.妻は,家に帰ったら自分の机の周りを掃除しろと言う.確かに汚いまま入院してしまった.