Ph+ALL日記

フィラデルフィア染色体陽性白血病と闘うIT労働者の記録

ベナンバックス吸引

先日,ニューモシスチス肺炎 *1 を予防するための薬「バクタ配合錠」の副反応で発熱・発疹が起きてしまった.この薬の代替として,2017年2月1日に「ベナンバックス」という薬を吸引した.

まずベナンバックスの吸引に先立って,「ベネトリン」*2という薬剤をおよそ5分かけて吸引する.ベネトリンは気管支喘息の治療に使われる末端の気管支を拡張する薬でベナンバックスの吸収を助けるために用いる.

5分程度の休憩ののち,ベナンバックスを5分毎に{ 座る,右向きに寝る,左向きに寝る,仰向けに寝る } と体制を変えながら,所定の量がなくなるまで繰り返し吸引する.

まず,ベナンバックスは不味い.吸引するもので飲んではいけないのだが,吸引するためには口の中を通さなければならない.当然,舌や喉の上を通るのだが,苦いというか舌が痺れるというか.姿勢を変えるたびにうがいさせてもらったが,その後丸一日喉が痛かった.

また,ある程度の量を飲み込んでしまったため,胃腸の動きが悪くなったように感じる.翌日は便通が悪くなっていた.

ニューモシスチス肺炎 (Pneumocystis pneumonia; PCP) は,AIDSの典型的な症状の一つ「カリニ肺炎」として知られる肺炎で,正常な免疫能力を持つ人が発症することは稀であり,免疫低下時に発症する日和見感染症である.最も AIDS で発症する PCP とそれ以外で発症する PCP では,病原体は同一でも症状は大きく異なる.AIDS 以外で発症する PCP は足が速く(1週間くらいで進行),予後が悪い(死亡率30〜35%).このため白血病の治療ではバクタやベナンバックスによるPCPの予防が必須となる.

この病気の病原体はニューモシスチス・イロベチイ(Pneumocystis jirovecii)と呼ばれる酵母様真菌*3である.かつては原虫 (単細胞の寄生虫)*4 に分類されていたが,遺伝子解析の結果菌類であることが判明した.この菌は肺以外では増殖せず,環境中にも発見されない.感染経路は解明されていないが,無症候性のキャリアが感染源となるという説が有力である.

ベナンバックスは月に1回吸引すれば良いそうだ.