Ph+ALL日記

フィラデルフィア染色体陽性白血病と闘うIT労働者の記録

入院10日目

2016年12月21日(水曜日)

今日から次の薬が処方された.

  • スプリセル 140mg/日: がん化した白血病細胞の異常な増殖を抑える薬.成分名はダサチニブ*1

この薬は,フィラデルフィア染色体 t(9; 22)から生成される BCR-ABL をはじめとした複数のチロシンキナーゼを標的とした分子標的薬で,慢性骨髄性白血病 (CML) やフィアデルフィア染色体陽性リンパ性白血病 (Ph+ALL) の治療に用いられる*2

CMLやPh+ALLでは、第9番染色体と第22番染色体が相互転座し、bcr-abl融合遺伝子を持つフィラデルフィア染色体が形成され、BCR-ABL融合蛋白を生成する。この融合蛋白は恒常的に活性化されたチロシンキナーゼであり、その結果細胞増殖のシグナル伝達に異常が起こり、過剰な細胞増殖が引き起こされCML、Ph+ALL病態が形成される。

ダサチニブは特定の蛋白チロシンキナーゼのキナーゼドメインにあるATP結合部位においてATPと競合する。BCR-ABL融合タンパク質のATP結合部位に結合するが、イマチニブとは異なる結合をすることがX線結晶構造解析の結果から明らかになっている[2]。また活性型・非活性型ともに結合する[3]と考えられている。BCR-ABLのみならずSRCファミリーキナーゼ (SRC、LCK、YES、FYN)、c-KIT、EPH(エフリン)A2受容体およびPDGF(血小板由来増殖因子)β受容体 (PDGFRβ) を阻害する。

この薬の副作用として,体液貯留,心不全心筋梗塞が生じうる(他にも多くの副作用がある).このため,ワイアレスの心電モニターを装着.常時でナースステーションから心電を監視されることに.