Ph+ALL日記

フィラデルフィア染色体陽性白血病と闘うIT労働者の記録

なんと、再発です。

肺炎治る

前回の肺炎はステロイドプレドニン)を2週間ほど飲んだら消えてしまった。結局、原因は不明だが、感染じゃなさそうなので、GVHDが出たのかもしれない。いずれにせよ肺炎での入院は免れた。

 

よかったよかった。・・・と思っていたら。

 

検査結果

主治医は、肺炎の検査でとった血液を念のためにPCR検査に回してくれていた。DNAを増幅して検出する。その結果、血球から男性の細胞にしかないXY染色体が検出されたそうだ。私が移植したのは女性の臍帯血なので、XY染色体が検出されたということは、癌化した自分の細胞があるということだ。

 

そこで慌てて、5ヶ月ぶりに骨髄検査をすることとなった。今年のこれまでの結果は、2月時点でBCR-ABL遺伝子の量を測るIS検査では0copy (検出限界以下)、5月の時は2copyと大きな問題はなかったのだが。木曜日に検査を行い、予定では1週間後の診察で結果を聞くはずであった。

 

しかし、週明け火曜日の仕事中に主治医から電話がかかって来た。患者から医者に電話することはあっても、医者からかかってくるのは良い知らせのはずはない(最初に白血病が見つかったときも、医者からの電話だった)。ただ詳しい話は電話ではしてくれない。できるだけ早く病院に来いとのことだった。

 

その週はとても仕事が忙しい週で、前半はたくさんのVIPの来訪が予定されていた上に、後半は飛行機で行かねばならない1泊の国内出張が入っていた。出張先は海産物が美味しいところで、仕事が終わったらうまいものを食べて帰ろうと思っていたのだが、止む無く帰りの便を限界まで早めて時間を作り、出張先から病院へ直行した。

 

再発

空港から病院に直行して主治医から骨髄検査の結果を聞く。

 

なんと、BCR-ABL(私の白血病にあるフィラデルフィア染色体が持つ遺伝子)が全体の33%もあったそうだ。前回 2copy しか検出されていなかったのが 5ヶ月で急増している。白血病の再発である。

 

私自身に自覚症状は全くないが、急性なのでこの後どれだけ早く進行するかわからない。すぐに入院を勧められたが、仕事に復帰して10ヶ月も経ってしまった。突然責任放棄するわけにもいかない。そこで、会社の人事や上司に話したり、心構えの調べ物をするために1週間だけ時間をもらって、翌週の金曜日から入院することとなった。

 

それまでの8日間、スプリセル(ダサチニブ)ブイフェンド(ポリコナゾール)を追加で処方された。スプリセルで血球減少が起こるかもしれず、感染症対策としての抗生剤だと思われる。

 

治療方針

これまで飲んで来たスプリセル(ダサチニブ)は第2世代のチロシンキナーゼ阻害薬である。第3世代の薬としてアイクルシグ(ポナチニブ)が2016年にアメリカで認可され、2017年には国内で認可された。

 

初回にはスプリセルがよく効いた。しかし、主治医は第3世代のアイクルシグを使うことを勧めている。BCR-ABL遺伝子はよく変異を起こし、T315iと呼ばれる変異を起こすとスプリセルに対して薬剤耐性を示す。時間が経てば変異の確率は高まる。これに対してアイクルシグはT315i変異があっても効果があるし、そうでなくてもスプリセルよりも効果が高いそうだ。しかし、副作用として血栓を起こす可能性があり、血栓脳梗塞心筋梗塞などの致命的な疾患を引き起こす。このため入院してリスクの高低を十分検査し、対策を打った上で、さらにモニタリングしながら、薬を使いたいということだ。

 

チロシンキナーゼ阻害薬以外にも、最近いくつか白血病に効果のある新薬が生まれている。

こう言った新薬を使うことになるかもしれない。

 

これらの薬で寛解に至ることはできるが、再発のない根治を目指すなら、再度移植をする必要があるようだ。前回の移植の前処理を思い出すと気が滅入る。

 

今日から入院だ。

 

肺炎

移植から1年5ヶ月、退院から1年以上経った。

これまで腎臓が少し弱っているという話が出ていたが、自覚的な症状は全くなく、すこぶる調子が良いと思っていた。腎臓はクレアチニンの値は高めで推移しているが、悪化もしていなかった。

ところが、2018年9月の月末頃に、大人数の聴衆を前に講演する機会があって、その際喉を痛めたと思ったら、実は風邪か何かを引いたようで、初めは気がつかなかったのだが、微熱がで始めていた。カロナールイブプロフェン)を服用しても熱は引く様子がない。かと言って、風邪の症状が酷くなることもない。ずっと38℃手前の熱が続いている。白血病が発覚する前の自覚症状に似ていて、気持ちが悪い。

 

ちょうど仕事が午前中ない日があったので、予約なしに病院に行って見た。外来担当医には「ちゃんと事前に連絡してから来てください」と怒られてしまったが、とても丁寧に診察してくれた。

そこでは、いつもの血液検査、尿検査に加えて、肺のレントゲンを撮る。検査結果が出るのを待って診察を受ける。血液検査の結果、炎症反応を表すCRPの値が7まで上がっており(正常な上限値が 0.14)、体のどこかに明らかな炎症が起きている。肺のX線画像には影がある(会社の定期健康診断でも、要再検査の判定であった)。このことから、肺炎が疑われる。問題は肺炎の原因だが、可能性として以下のものが考えられる。

  • 細菌性の肺炎
  • インフルエンザなどウィルス性の肺炎
  • サイトメガロウィルス肺炎
  • カビによる肺炎
  • カリニ肺炎
  • GVHD (graft-versus-host desease = 移植後の拒絶反応)

今のところ体の他の部位には、何も症状が見当たらないことから、GVHDの可能性は低そう。以前はカリニ肺炎対策のベナンバックスの吸引を毎月行っていたが、移植1年経った時にもう十分ということで中止したのだった。カリニ肺炎には特有の症状があるはずだが、それも見当たらないということで、可能性は低い(万一カリニ肺炎だった場合、悪化のスピードが早く命に関わることが知られている)。抗生剤はすでに処方されていて、効果があったようには見受けられないので、細菌性でもなさそう。残るはウィルスかカビか。とりあえず、サイトメガロウィルス用の薬を処方され、翌週のCT撮影の予約を入れて帰る。

 

翌週再来院し、血液検査、尿検査、CT検査を行う。腎臓は相変わらず、CRPは8とあまり上昇せず、CTの結果、やはり肺に問題がありそうだ。できれば即入院して、肺胞に水を流して直接検体を取り、原因を調べる検査をしたいそうだが、仕事の都合上そうもいかない。そこで、抗生剤、抗ウィルス薬を継続しつつ、対症療法の特効薬であるステロイドを少量服用して、炎症を抑えることにした。

処方されたプレドニン5mgを1日2回服用することとなったのだが、処方されたその日に1錠飲んだところ、たちどころに熱は下がった。ステロイドは強力だ。食欲も出て、とても元気になった(空元気かもしれないが)。しかし、元気すぎるのか、夜よく眠れない。担当医に相談したところ、プレドニンの量を半分 (1日5mg)にすることした。それでも症状は完全に消えてしまった。

 

プレドニン(ステロイド)が処方されて、今日で1週間。症状は完全に押さえ込まれているが、肺炎の原因は未だ不明のまま。

移植から1年

2017年5月に臍帯血移植してから1年以上たった。

退院後、3ヶ月に1回(計3回ほど)骨髄検査を行なった。1回目は3copy、2回目は0copy、3回目は 2copyと言うことで、BCR-ABL遺伝子は完全に消えてはいないが、増えてはおらず、順調と言うことか。

ただし、腎臓に関係する数値が悪い。クレアチニン、尿酸値が高めで、尿にタンパクが少し混じっている。腎臓のフィルター能力が下がっているらしい。腎症のステージ3に相当する数値で、これが進行してしまうと、人工透析が必要になる。

お世話になった病院には腎臓内科がないので、別の病院にかからなければならないかもしれない。

糖尿病のコンテキストでだが、ステージ3は「ポイント・オブ・ノーリターン」といって元には戻らないと言う話も聞く。

水を大量に飲むようにと指導され、さらに尿酸を減らす薬「フェブリク」10mgを毎朝飲むことになった。来月の検査の結果どうなるだろう。

退院

8月24日,突然退院が許可された.

昨年12月12日に入院して以来256日ぶりの退院.長かった.本当に長かった.

白血病は病気の性質上,治ったとは言わないのだそうだ.実際,Ph染色体は検査で検出されてしまうので,それが増えないことを祈るわけだが,遺伝子検査の感度が良すぎて検出できてしまうが,それ以外の種類の白血病だった場合は検出不能なので「寛解」でおしまいになるところだ.

Ph+ALLの場合は検査できるし,薬もある.ポナチニブの服用を開始するかどうかは,通院しながら様子を見て決めることになっている.

 

傷病手当金の申請を忘れていた!

会社の福利厚生の制度で,短期(13週間まで)の病気休職は完全に有給で(有給休暇があればそれを追加して使うことも可能で),それを超えた分は無給の長期休職に入るのだが,ありがたいことに健保組合が標準報酬月額の75%を給付してくれる.

短期休職・有給休暇・長期休職の会社宛ての手続きは完了していたのだ全ての手続きが終わっていると思っていたが,健保組合の給付金の申請は実は別だったのだ.今日今月の給与明細を見て初めて気がついた.有給の期間が終わり無給の休職期間が始まっってからもう1ヶ月経っている.申請先が健保組合だから手続きが別なのは当然と言えば当然だし,休職の手続きのやりとりのメールの中に,給付金受取りのための手続きが書かれたページのURLが載っていた.

慌てて手続きをせねば.遡って申請するものではないとあるが,1月遅れでも許してもらえるとありがたい.

ちなみに標準報酬月額というのと,実際に支給されている給与の金額はちょっと違う(標準報酬月額の方が少ない).この標準報酬月額にしたがって,健康保険料,厚生年金保険料が決まる.介護保険も同様だがまた別の額が基準になっている.

生着後2回目の骨髄検査結果

2017年7月6日(木曜日)に生着後2回目の骨髄穿刺を実施.およそ1週間経って,全ての結果が出た.以下の通り.

  • Ph FISH: negative (0.3%以下)
  • qPCR bcr-able: 6 copies
  • IS%: 0.0126%
  • chimerism XYFISH recipient%: 1.8%

ということで,まだ PCRbcr-abl は検出されてしまうものの,前回よりもだいぶ前進している.キメリズムも 2.6% から 1.8% に減少しており,良い傾向だと思われる.

改善傾向だということがわかったので,次回は3週間後かな.その時bcr-ablが消えていると良いのだが.

食欲

移植以来,食べやすい食事を特別食として出してもらっている.普通の白斑やうどんを食べられる気がしないので,パン,コーンフレーク,カップスープ,ゼリーなどの,言ってみればジャンクフードを中心に食べている.不足するカロリーはCV経由で点滴してもらうことで,体重は維持または徐々に微減程度で収まっている.

しかし,退院に向けての準備,健康管理としては,CVはいずれ抜かねばならないので,普通食が普通に食べられるようにならなければならない.味覚が狂っていることもあるが,無理にでも食べる練習が必要だ.

一体,何が食べたいだろう?刺激の強い食べ物が食べたい気もするし,そんなものを食べたら腹を壊しそうな気もするし.

生着後の不快

骨髄穿刺 生着後1回目

6月17日に生着してから5日後の6月22日に骨髄穿刺(骨盤に太い針を通して,骨髄を抜いて調べる)*1  を実施.従来の骨髄穿刺では,白血病細胞がどのくらい残っているかが主な関心事であった.今後もそれが最重要であることは変わりがないが,さらに移植した細胞由来の血球と,もともとの自分の細胞由来の血球の割合がどの程度であるかというのが,新しい関心事になる.もちろん,病気がないはずである移植した細胞由来の血球が100%であることが望ましい.

同じ病院で知り合った患者の中には,この自分由来の血球が当初何割といったレベルで残っていたという人もいた.全ての結果が出揃うには1週間ほどかかる.

急性GVHDの始まり

毎日ではないにしろ,時々急に胃が収縮してしまう.ほとんど何も食べていないため,出てくるものは胃液のみで綺麗なものだが,嘔吐には多大な体力が必要だ.普段吐き気はないため,吐き気どめの薬などはまったく無力,効果なしである.吐いてしまえばしばらくスッキリする.

一旦収まった生着熱だが,ここに来てまた熱(場合によっては38℃近い高熱)が出ては下がり,出ては下りの繰り返し.熱が上がる際には寒気がして,布団に潜って震えることになる.

内腿,腕,首,耳あたりに皮疹が出て痒くなる.掻いてしまうと後でひどいことになるというので,掻くのを我慢して保湿剤またはベナパスタ(古くからある抗ヒスタミン系の軟膏)を塗って我慢する.痒くて眠りが浅くなるので,時々抗ヒスタミン剤のアレルギーどめを点滴してもらう.

下痢も相変わらず.胃腸の調子が悪い.どう悪いと表現できないのだが,何も食べたくないし,飲みたくない.何も食べていないにもかかわらず,水下痢が出るという状態.

骨髄移植に比べて臍帯血移植はGVHD (Graft versus Host Disease; 移植片 対 宿主 病) *2の程度が穏やかに済むと言われている.私の状況は殊更ひどく悪いわけではないのだろうが,辛いのは間違いない.

症状の辛い順に,(1) 突然の嘔吐, (2) 発熱, (3) 皮疹の痒み, (4) 下痢.この無限ループがおよそ3週間続いた.

骨髄検査の結果

6月22日に実施した骨髄穿刺の結果は以下の通りであった.

  • 目視検査: 異常なし(白血病細胞は認められない)
  • FISH検査による bcr-abl の存在: negative (1%以下)
  • PCRによるbcr-ablの割合 (IS%値): 0.0335%
  • ドナー由来とホスト由来の割合 (キメリズム *3 ): 2.6% がホスト由来

幸か不幸か,PCRで非常に高精度に白血病細胞の有無が検出できてしまう.まだ白血病細胞が存在していることが確認されたわけだ.ドナーの血球が白血病細胞を含む私由来の血球を駆逐してくれると良いのだが.また,ダサチニブをまた使用することも選択肢となり得る.ただ,ダサチニブは GVHD を悪化させるという報告もあるらしく(好転させるという,真逆の報告もあるらしいが)現時点では「試しに使ってみるか」というわけには行かないのだそうだ.

免疫抑制剤からステロイドに切り替え

免疫抑制剤(サンディミュン)は続けているが,この薬は腎臓に負担が出るようで,クレアチニンの数字が徐々に悪くなってきている.腎臓を保護するための対策として,イノバンという腎臓の血流を増やし,尿を出やすくする薬を静注しているが,それでも数値が徐々に後退している.このため,嫌が応にも,免疫抑制剤を減らしていく必要があるそうだ.

ついに7月8日(土曜日)を最後に免疫抑制剤をやめることになった.しかしGVHDが(私にしてみれば強く)出ているタイミングなので,ステロイドを(治療初期の大量投与に比べれば少量)点滴して,苦痛を緩和する対症療法を取ることとなった.

ステロイドなので,リンパ球を破壊したり,多少の骨髄抑制が生じたり,CMVを活性化する可能性が考えられるが,それは別途対策を取るとして,長く続いた体の辛さを取ってくれることが期待される.

実際,ステロイドが入った7/8の翌朝からは,とても元気になった.熱は我慢ができる程度(37℃程度),皮疹はだいたい収まり,痒みもなくなった.急に食欲まで出て来た.さすがステロイドだ.