Ph+ALL日記

フィラデルフィア染色体陽性白血病と闘うIT労働者の記録

生着後2回目の骨髄検査結果

2017年7月6日(木曜日)に生着後2回目の骨髄穿刺を実施.およそ1週間経って,全ての結果が出た.以下の通り.

  • Ph FISH: negative (0.3%以下)
  • qPCR bcr-able: 6 copies
  • IS%: 0.0126%
  • chimerism XYFISH recipient%: 1.8%

ということで,まだ PCRbcr-abl は検出されてしまうものの,前回よりもだいぶ前進している.キメリズムも 2.6% から 1.8% に減少しており,良い傾向だと思われる.

改善傾向だということがわかったので,次回は3週間後かな.その時bcr-ablが消えていると良いのだが.

食欲

移植以来,食べやすい食事を特別食として出してもらっている.普通の白斑やうどんを食べられる気がしないので,パン,コーンフレーク,カップスープ,ゼリーなどの,言ってみればジャンクフードを中心に食べている.不足するカロリーはCV経由で点滴してもらうことで,体重は維持または徐々に微減程度で収まっている.

しかし,退院に向けての準備,健康管理としては,CVはいずれ抜かねばならないので,普通食が普通に食べられるようにならなければならない.味覚が狂っていることもあるが,無理にでも食べる練習が必要だ.

一体,何が食べたいだろう?刺激の強い食べ物が食べたい気もするし,そんなものを食べたら腹を壊しそうな気もするし.

生着後の不快

骨髄穿刺 生着後1回目

6月17日に生着してから5日後の6月22日に骨髄穿刺(骨盤に太い針を通して,骨髄を抜いて調べる)*1  を実施.従来の骨髄穿刺では,白血病細胞がどのくらい残っているかが主な関心事であった.今後もそれが最重要であることは変わりがないが,さらに移植した細胞由来の血球と,もともとの自分の細胞由来の血球の割合がどの程度であるかというのが,新しい関心事になる.もちろん,病気がないはずである移植した細胞由来の血球が100%であることが望ましい.

同じ病院で知り合った患者の中には,この自分由来の血球が当初何割といったレベルで残っていたという人もいた.全ての結果が出揃うには1週間ほどかかる.

急性GVHDの始まり

毎日ではないにしろ,時々急に胃が収縮してしまう.ほとんど何も食べていないため,出てくるものは胃液のみで綺麗なものだが,嘔吐には多大な体力が必要だ.普段吐き気はないため,吐き気どめの薬などはまったく無力,効果なしである.吐いてしまえばしばらくスッキリする.

一旦収まった生着熱だが,ここに来てまた熱(場合によっては38℃近い高熱)が出ては下がり,出ては下りの繰り返し.熱が上がる際には寒気がして,布団に潜って震えることになる.

内腿,腕,首,耳あたりに皮疹が出て痒くなる.掻いてしまうと後でひどいことになるというので,掻くのを我慢して保湿剤またはベナパスタ(古くからある抗ヒスタミン系の軟膏)を塗って我慢する.痒くて眠りが浅くなるので,時々抗ヒスタミン剤のアレルギーどめを点滴してもらう.

下痢も相変わらず.胃腸の調子が悪い.どう悪いと表現できないのだが,何も食べたくないし,飲みたくない.何も食べていないにもかかわらず,水下痢が出るという状態.

骨髄移植に比べて臍帯血移植はGVHD (Graft versus Host Disease; 移植片 対 宿主 病) *2の程度が穏やかに済むと言われている.私の状況は殊更ひどく悪いわけではないのだろうが,辛いのは間違いない.

症状の辛い順に,(1) 突然の嘔吐, (2) 発熱, (3) 皮疹の痒み, (4) 下痢.この無限ループがおよそ3週間続いた.

骨髄検査の結果

6月22日に実施した骨髄穿刺の結果は以下の通りであった.

  • 目視検査: 異常なし(白血病細胞は認められない)
  • FISH検査による bcr-abl の存在: negative (1%以下)
  • PCRによるbcr-ablの割合 (IS%値): 0.0335%
  • ドナー由来とホスト由来の割合 (キメリズム *3 ): 2.6% がホスト由来

幸か不幸か,PCRで非常に高精度に白血病細胞の有無が検出できてしまう.まだ白血病細胞が存在していることが確認されたわけだ.ドナーの血球が白血病細胞を含む私由来の血球を駆逐してくれると良いのだが.また,ダサチニブをまた使用することも選択肢となり得る.ただ,ダサチニブは GVHD を悪化させるという報告もあるらしく(好転させるという,真逆の報告もあるらしいが)現時点では「試しに使ってみるか」というわけには行かないのだそうだ.

免疫抑制剤からステロイドに切り替え

免疫抑制剤(サンディミュン)は続けているが,この薬は腎臓に負担が出るようで,クレアチニンの数字が徐々に悪くなってきている.腎臓を保護するための対策として,イノバンという腎臓の血流を増やし,尿を出やすくする薬を静注しているが,それでも数値が徐々に後退している.このため,嫌が応にも,免疫抑制剤を減らしていく必要があるそうだ.

ついに7月8日(土曜日)を最後に免疫抑制剤をやめることになった.しかしGVHDが(私にしてみれば強く)出ているタイミングなので,ステロイドを(治療初期の大量投与に比べれば少量)点滴して,苦痛を緩和する対症療法を取ることとなった.

ステロイドなので,リンパ球を破壊したり,多少の骨髄抑制が生じたり,CMVを活性化する可能性が考えられるが,それは別途対策を取るとして,長く続いた体の辛さを取ってくれることが期待される.

実際,ステロイドが入った7/8の翌朝からは,とても元気になった.熱は我慢ができる程度(37℃程度),皮疹はだいたい収まり,痒みもなくなった.急に食欲まで出て来た.さすがステロイドだ.

祝!生着

移植後1週目(5/26-6/1)

移植のせいではなく,移植の前処理(放射線照射と抗がん剤)の影響で,どこがどう悪いのかわからないけれど,何しろ気分が悪い.症状としては吐き気と下痢.ひたすら寝てやり過ごすしかない.

これをもう一度経験したくはない.万一生着しなかった時はもう一度移植をするらしいが,その際ももう一度前処理をするらしい.もう勘弁してほしい.

移植後2週目(6/2-6/8)

下痢は相変わらずだが,吐き気は徐々に収まり,2日に一度嘔吐発作に襲われるくらいになった.これによって不快さはだいぶ減ったが,どことなく気分が悪いのは続いている.

ひたすら時間が過ぎるのを待つ.

移植後3週目(6/9-6/15)

徐々に発熱が始まった.生着熱というらしい.寒気がして布団に潜り熱が上がり,熱くなって布団から出て熱を冷ます,ということの繰り返し.最高で37.7℃.解熱剤(カロナール)はちっとも効かない.

皮膚に発疹が現れ始める.皮膚が乾燥するのが悪いらしく,保湿剤を多用するよう進められるが,普段使ったことがないのでベタつく感じがしてなかなか使えない.

3週目の終わりには突然,発熱も発疹も治った.

2017年6月17日土曜日

移植から3週間が経過.週末だったため普段と検査機器が異なるが,白血球数が1500を超えたため(基準は好中球が500/uL以上だが,白血球の半分が好中球で優に基準を超えているため)生着と判断された.

 

臍帯血からの造血幹細胞移植

2017年5月25日(水曜日)

ついにこの日を迎えた.気持ちの悪さはだいぶ取れている.前日からサンデュミュンと言う免疫抑制剤を点滴している.これは移植後も当分続く.

移植は自室で行われる.

午前中にバイタルモニタが乗ったワゴンが運ばれて来て,心電,酸素飽和度,血圧が適時自動測定できるように準備が進められる.

臍帯血は液体窒素で冷凍保存されており,解凍を始めると同時に細胞が壊れ始めるので,一連の処理はできるだけ速やかに行う.

  • 12:00から,担当医が臍帯血が入った小さなパックの解凍を開始.
  • 12:30から,CVから注射器で臍帯血を3回に分けて注入.

12:40には,移植は完了していた.

注入直後から,ほんのりと「青のり」の香りを感じた.これは臍帯血を保存している溶液が血中を周り,肺や口内で気化して感じられるものらしい.人によっては,この溶液にアレルギーが出る場合がある.

臍帯血は少量で貴重であるため,注射器や管に残った細胞を残らず体内に送り込むために,生理食塩水を使って残らず体内に送り込む.

窓越しに家族も見に来ていたが,あっという間に終わってしまった.本人にもなんの変化もない.

 

今朝の段階で,白血球500, ヘモグロビン9.6, 血小板 8900.これからどれも急激に下がっていくはず.適時輸血を受けることになる.

造血幹細胞移植前処理(2)- エンドキサン大量投与

2017年5月22日(月曜日)〜 5月23日(火曜日)

X線照射の影響が少し抜け始めたところで,5月22日(月)と5月23日(火)の2日間,エンドキサンという抗がん剤を大量に投与を受けた.

エンドキサンは過去にも強化地固め療法で使ったものだ.標準的なプロトコルでは,エンドキサンに加えてキロサイトも使うのだが,私はキロサイトで小脳性運動失調という重大な副作用が出てしまったので,キロサイトの使用を回避するレシピになっている.

エンドキサンの投与は,朝10時から12時の間CVからの点滴で薬を入れるだけなので,それ自体は大したことはない.しかし,その後の不快感は大変なものだった.

まずは吐き気.口の中が粘ついて気持ち悪いのだが,普段は吐きたくなるほどではない.でも時々発作的にやってくる吐き気で嘔吐せざるを得ない.食欲はとうになくっていてしばらく何も食べていないので,出てくるものは胃液だけ.でも吐かずにはいられない.ベットからすぐ手の届くテーブルの上に,あらかじめ口を広げておいたビニール袋を用意していつ嘔吐発作がきても良いように準備する.嘔吐したらナースコール.

次に排尿.エンドキサンの副作用で出血性膀胱炎になりやすくなるので,朝昼晩を問わず2時間に1回以上の排尿が義務付けられている.もし自主的に前回から2時間以内に排尿しなかったら寝ていても看護師に起こされる.排尿したら計量カップに採ってナースコール.点滴で大量の水分を入れているにもかかわらず,薬のせいで尿量が減っている.

最後に下痢.ついこの前,放射線照射を受けていた頃は便秘気味だったのに,あっという間に下痢になってしまった.一旦腹のなかの食べたものがなくなると,その後は水のような便が出るようになる.

とにかく,居ても立っても気持ち悪くて,あらゆるものを体外に出したい…という状況が5月24日(水曜日)の朝まで続いた.

 

 

造血幹細胞移植前処理(1)- 放射線照射

2017年5月17日(水曜日)

いよいよこれから,全身に放射線X線)を浴びる処置(Total Body Irradiation; TBI)を受けに行きます.

今日・明日の2日間,午前・午後の2回づつ1時間,毎回3Gy(グレイ)でトータル12Gyの放射線を全身に浴びて,自分の骨髄を全て殺します.

γ線β線の1Gyを全身に浴びた時の体の影響を1Sv(シーベルト)と呼ぶという話だったと思うので,12Gyは12Svに当たります.年間1mSVが一般生活の基準値だったと思うので,日常生活の12,000年分の量を2日で浴びる計算になりますね.

照射は,普通のレントゲン撮影に使う機械を,通常の使い方だと胸とか腹とかといった体の一部にしか放射線が当たらないところを,もっとX線発生機と被写体である私の体との間の距離を離すことで,全身にX線が当たるようにして行います.

この距離をとために,照射は横向きで行われます.だから少し遠くにあるレントゲンの照射器に,正面(午前中)または背面(午後)を向けて,右肩を下にして横向きに寝て,1時間ほど固定されて,X線の照射を受けます.まあ,あまり快適でない日焼けサロンのようなものでしょうか.

 

1日目が終わって,自分の病室に戻ってきました.

なんとなくふわふわしたような感じがあるのと,耳の下の耳下腺(唾液腺)に触ると痛みがあります.それと関係しているのでしょう,口の中がネバネバしているのと,多少熱っぽく(実際37度前半の微熱が出ていて)体がだるい感じがしています.

 

2017年5月18日(木曜日)

2日目の朝.熱は下がって元気が出てきました.これから2日目の照射に行ってきます.

 

2日目も1日目と同じことを繰り返して帰ってきました.照射前となんら変わりないような気もするし,ふわふわするような気もする.耳下腺が触ると痛くて,口の中がネバネバしているため,吐き出したい気分.あえて付け加えると,くしゃみと鼻水が出るかな.

全く食欲がないので,夕食はスキップして吐き気どめを点滴.また熱が37.6度出たので,抗生剤を点滴.

1週間移植延期

2017年5月8日(月曜日)

連休明けの初日.だいぶ前に入れたCVの周りが直径1cmくらい赤くなっている.夕方から明け方にかけて微熱が出たり出なかったりするし,軽い頭痛がある.もしかするとCVが刺さっている首回りから細菌に感染しているのかもしれない.

ということで,一旦CVを抜いてみることにする.

明日(5/9)まで状況を見て,5/18に予定通り移植を実施するか,1週間伸ばすかを決定する.

2017年5月9日(火曜日)

CVを抜いたところの赤みは取れてきている.熱は出にくくなったようだ.炎症反応(CRPの価)も下がってきている.CVが悪さをしていたかのように見えるが,はっきりはしない.

大事をとって,移植の1週間延期を決定.

全ての日程を単純に1週間送らせる.移植日は5/25.放射線照射は5/17, 18に決定.CVは5/11に入れることにする.

骨髄検査結果

5/1に実施した骨髄検査(マルク)の結果が出ている.それを含めて,入院以来の骨髄検査での主な結果を晒しておく.

Date 有核細胞数
(NCC)
巨核球数
(MgK)
FISH% BCR-ABL IS%
2016/12/12 213000 16 NA 750000 NA
2017/1/20 24000 30 0.3 4793 2.5668
2017/2/2 13000 0 1.4 1389 1.9126
2017/3/14 4000 0 0.1 97 0.2026
2017/4/13 182000 80 0.1 56 0.1426
2017/5/1 39000 0   41 0.049

ただし,

  • 有核細胞数: 核を持っている細胞の個数 [個/ul].
  • 巨核球数: 血小板を作るもとである巨核球数の数 [個/ul].
  • FISH%: BCR遺伝子に緑,ABL遺伝子に赤の発色剤を結合させる.普通の細胞では両遺伝子が離れているため緑と赤が識別できるが,Ph染色体のある細胞では両遺伝子がくっついているため黄色に見える.この方法で観測されるBCR-ABL遺伝子を持つ好中球の割合 [%].
  • BCR-ABL: PCRによってカウントされる,BCR-ABL遺伝子の500ngあたりの個数 [個/500ngRNA].
  • IS%: PCRによってカウントされる,BCR-ABL遺伝子の個数とコントロールとなるABL遺伝子の個数の比 [%].International Scaleの略.

と理解した.IS% の検出限界は 0.0007% らしい.