Ph+ALL日記

フィラデルフィア染色体陽性白血病と闘うIT労働者の記録

がん保険の必要性

白鳥やら癌サバイバーのタレントを使ったCMで「がん保険」の必要性を主張している.さて本当に医療保険がん保険は役に立つのだろうか?私自身のケースではどうなのか見ていこう.

医療費負担額は?

まず幾らくらいの負担が発生しているか具体的に見てみる.

入院した2016年12月12日から2017年1月末までの合計51日間で,私が病院に支払った自己負担金は526,623円であった.これが今後何ヶ月も続くとなると大変だ.確実に破産してしまう.これを補うために医療保険に入っておくべきだったのだろうか?

私が加入している健保組合の仕組みを調べてみると,3ヶ月後に一定の基準を満たす高額医療費に対して,毎月の自己負担が(健保組合が規定する)一定金額になるように付加給付金が降りることになっている.私の入っている健保組合の場合,自己負担額はわずか25,000円.つまり実質的に私が負担しなければならない金額はたった月額25,000円だけなのだ.一旦病院に支払った上記の金額の大半は,後で付加給付金として戻ってくるのだ.

これほどの付加給付金が出せる健全な財政を保っている健保組合に感謝するしかないが,このような制度のある健康保険組合に加入していれば,入院費用等が支払われる医療保険に入る必要性はほとんどないと言って良いと思われる.

なお付加給付金が支払われるのは発生してから3ヶ月以上後なので,それまでの間は自己負担する必要がある.従って,ある程度のキャッシュは手元に持っていないといけない.(病院窓口で支払う額を減免する高額医療証を発行してもらうことができ上記の金額はこれを適用した結果である.ただし,最終的に支払う自己負担額はこれを使っても変わらない.)

買っていた保険は?

さて,私自身は実際どんな保険に入ってたのかと言うと…

私は若い時,22年前の28歳時点で,ちょっと無理をして終身保険に加入していた.60歳払い込み完了で,いつ死んでも一定額の保険金が降りるというやつで,毎月の保険料は高額だが,積立貯金のようなもので確実に遺産が残せると考えていた.

妻と娘にはそれで十分だと考えたところ,ずっと後になって娘の14歳下に息子ができてしまった.私が定年しても息子は成人しない.万一早めに私が死ぬと息子の養育費が出せなくなり困るので,給与保証の保険に新たに加入した.私が早く死んだ時には65歳になるはずだった時まで毎月一定額が給与のように支払われる.

医療保険は役に立つ?

後者の給与保証保険には,癌と診断された場合には以後の保険料の支払いが免除されると言う特約をつけていた.今回それが発動して,保険金は(まだ死んでないので)降りないが,今後保険料を毎月支払う必要がなくなった.保険料を払わなくても保証が継続すると言うことで,実質的に保険料分の保険金が下りたのと同じことになる.

前者の終身保険には入院費保証の特約をつけていた.入院5日目から日額5,000円.癌での入院の場合はさらに追加で日額10,000円.つまり入院中日額15,000円が支給される.

毎月25,000円の自己負担に対して,1日15,000円の保険金が出るのだから,随分と得するように思うかもしれない.しかし長期間加入していたので,これまで支払った特約保険料の総額はとても大きい.元を取るまでには相当の期間入院しなければならない.第一,ここでちょっと得できたとしても,保険としてはなんの役にも立っていない.つまり,私の場合,入院費特約はつけるべきでなかったのだ.

私の勤務先の制度として,短期間(約3ヶ月)は有給休職できるが,その期間を過ぎるとその後約2年間は無給休職となり,その間は健保組合が給与の2/3を補填してくれる.それを過ぎると退職となる.退職に至らずに職場復帰できると仮定すると,大半の収入が保証されるので,必要な保険はほとんどないと言って良さそうだ.

それでも役に立つ保険があるとすると,がん診断時あるいは闘病期間中の収入を保障してくれる保険とか,がん診断時に以後の支払いが不要となる住宅ローンを買っておけばよかった.

 

以上,あくまで私のケースではどうなのかと言う話でした.

保険は,稀なイベントで,もしそれが起こると金銭的に生活が成り立たなくなるなど破壊的な結果になり得る場合,そのリスクを回避するために購入すべき.

サラリーマンの場合,勤務先で加入している健康保険がどのような保障を提供しているか調べ,それが十分手厚い場合(私の場合はそうでした),個人で医療保険がん保険に入る必要性はない.

以上はあくまで「健康保険が適用される範囲の治療を受ける」場合についての話です.健康保険が適用されないような先端医療や民間療法を使いたい場合は特別な保険が役に立つかもしれません.

入院90日.地固め療法後の検査いろいろ

2016年12月12日に突然入院してから,2017年3月11日でまるまる90日を迎えた.

強化地固め療法も終わって今週はその成果を確認するための検査の1週間.

  • 胸部レントゲン
  • 呼吸器(肺活量など)
  • 心電図
  • 外科(肛門)
  • 腹部超音波
  • ガリウムシンチ
  • 頭部MRI
  • 心臓超音波
  • 骨塩定量
  • 耳鼻科検診(他院受診)
  • 歯科・口腔外科検診(他院受診)
  • CT
  • 眼科検診
  • 骨髄穿刺(マルク)
  • 腰椎穿刺(髄液検査・抗がん剤投与)

以上を一通りやりました.

今後の移植までの間で,口と肛門が問題を起こしやすいところなのだそうで,重点的に検査したのだそう.

肛門を見てもらったのは初めて.耳鼻科で胃カメラならぬ喉カメラで喉を見てもらったのも初めてだと思う.幸い,新たな問題は見つからず.

歯科・口腔外科では歯と歯茎を洗浄してもらった.1年ちょっと前に地元の歯医者で悪いところを直してもらっておいたのは良かった.もし悪い歯が残っていたら間違いなく抜かれていた.

今後の方針説明

2017年3月14日午後に,担当医から今後の治療法方針の説明を受ける.妻,娘と一緒に聞く.その要旨は以下の通り.

  • もう1サイクル地固め療法を実施する.およそ3週間.
  • そのまま移植前処理,造血幹細胞移植へと進む.
  • ドナーは臍帯血バンクを使用する.すでにHLAが適合するものを確保している.弟の骨髄もHLAはマッチしている.骨髄と臍帯血の比較をした上で,臍帯血を選択したい.
    • 骨髄(特に親族の骨髄)は定着が早い.臍帯血は定着に時間がかかる.定着までは免疫が下がるため,感染のリスクが高く,厳重な管理が必要.
    • 臍帯血はすでに確保済みであり,移植はCVから点滴するだけで容易.骨髄はドナーに仕事を休んでもらうなどして長期間の時間を確保し,全身麻酔して骨盤等からある程度の量の骨髄を取らねばならず,患者(私)のコンディションの良い時に実施することが難しい.
    • 骨髄の方が歴史があり事例が豊富.臍帯血は歴史が浅く全国的に言うと成功率がまだ高くない.(この病院では骨髄と同程度以上の成績を上げている)
    • 臍帯血の方がHLAの適合が4/6でも実施可能.骨髄は5/6マッチする必要がある.
  • 移植時期はちょうどゴールデンウィークごろの計算になるが,安全を考えてゴールデンウィーク後しばらくして(一旦止まった機器の動作が安定する頃)に実施したい.
  • 移植後,70日から100日で退院するのが標準的.

ということで,5月の半ばに移植,その後3ヶ月くらいで退院できるといいなというのが目標とするプランである.

 

外泊許可

31日間の強化地固め療法も終盤を迎える.ステロイドの量が減ってきて,血球数も回復.今週末は外泊の許可が出た.

中央静脈カテーテルが入っていてこれを48時間以上放置すると固まってしまうので期間は1泊だけ.

さて,何をしようか?

なお,お酒は飲んではダメだと言われております :-)

腸内常在菌の変化と院内感染予防

2017年2月27日(月曜日)

毎週月曜日は検査の日.咽頭検査,尿検査,便検査を行っている.

今回の便の検査の結果から,どうやら

  • ステロイド抗がん剤の作用で,好中球数が下がり免疫が下がる→
  • 免疫を支えるために抗生剤を使用する→
  • 腸内の菌の分布が変化する→
  • 腸内で病原性を持つ菌が増えてきている

ということが起こっているらしい.

具体的な菌の名前は,医師から聞いたのだが,残念ながら私に認識できる(その場で覚えらる)名前ではなかった.

現時点では下痢にもなっておらず,問題が生じているわけではない.また,元々誰の腸にでも少量は存在しているものらしい.通常は,他の善玉菌が押さえ込んでくれている.

しかし,抗生剤を長期間使っていることで,腸内の環境が変化して,リスクとして表面化してきたということだそうだ.

この菌が他人に移ると「院内感染」ということになってしまう.それを防ぐために,トイレは常に清潔に保つ必要がある.当面は用を足した後は次亜塩素酸ナトリウム入りの洗剤で便座等を拭いて清潔に保つ.

今週からステロイドのテーパリング(漸減)が始まり,それによって免疫力が回復するので,抗生剤もやめていく方向にある.このまま問題ないと良いのだが.

便秘対策(下剤の種類)

ステロイドプレドニン)と抗がん剤オンコビン)の副作用と思われるが,便通が悪い.

これまで酸化マグネシウムプルゼニドという2種類の下剤を使用してきた.

  • 酸化マグネシウムは塩類下剤と呼ばれる種類で,浸透圧が高いマグネシウムが便に混ざることで,水分を引き寄せて便を柔らかくすることにより通便を促す.
  • プルゼニドは大腸刺激性(アントラキノン系)の下剤で,大腸粘膜を刺激して腸のぜん動運動を引き出す.

これらでは不十分であると判断して,「ラキソベロン」という,やはり大腸刺激性(ジフェニルメタン系)の下剤を追加で処方してもらった.これは透明な液体で,水に数滴混ぜて服用する.なん滴入れるかで細かな調整が可能なのだが,初めて使うので加減がわからない.とりあえず10滴からスタートしてみる.

まとめると,便秘薬(下剤)には以下の種類がある.

  • 刺激性下剤: 腸粘膜を刺激して,腸の動きを促す.
  • 機械性下剤: 便に水分を呼び込んで排泄を促す.
    • 拡張性下剤
    • 塩類下剤: 酸化マグネシウムなど浸透圧の高い塩類を便に含ませ,水分を引き込む
    • 糖類下剤
    • 潤滑性下剤: 界面活性剤を使って便の表面張力を下げ,水分を引き込む

今回,このうち2種類(3剤)を併用していることになる.

坊主

始まった脱毛の続きの話.

頭髪は引っ張れば面白いように抜けていく.しかし手で触りやすいところはよく抜けるが,そうでないところは勝手には抜けないので,斑らになってかなり見っともない.いつか毛の掃除に必要だと思って家から持ってきたガムテープで頭をペタペタすると,すぐにガムテープの粘着力の限りに毛がくっつくから,それで斑らを調整してみる.キリがないけどね.頭皮を傷めるといけないので程々でヤメておこう.

前回の帰宅時に床屋に行って短めにしてはあったのだが,すでに2週間以上経っていて伸びていることもあり,シャワーを浴びるた後に頭を拭くと,タオルは毛だらけだ.湿った体に毛もつくし,これではせっかくのシャワーでスッキリできない.f:id:x010:20170222190845j:imageそこで看護師さんにお願いして,看護師の中で理容師の資格も持っている人に来てもらって,頭を丸めてもらうことにした.

←その結果がコレ.

海老蔵の気分かな.思ったより頭が「光って」いるな.実は短い顎髭を生やしていたのだが,それも一緒に剃ってしまった.

普段は事前に用意した手ぬぐいを頭に巻いて,ラーメン屋の店員のようなスタイルで過ごすことにする.

ちなみにこの写真で着ているのは「ジェラート・ピケ」の室内着.これからの季節には少し厚手かもしれないが,ふかふかで暖かいし気持ちが良い.

確定申告

病院に投獄?幽閉?隔離?されていても,税金の季節はやってくる.

私はサラリーマンなので普通は面倒な確定申告は不要である.勤務先が源泉徴収し,年末調整してくれる.しかし,私はたまたま複数の勤務先から給料をもらっていることと,そのうち1箇所からの給与が(一部)源泉徴収されていない,また海外の証券会社で株取引がある,と行った理由で,毎年必ず確定申告しなければならない.

上記の事情でここ数年間毎年やっていることではある.しかし1年に一回というのは,細かなやり方を忘れてしまうには十分な期間だ.ああメンドくさい.

しかし,昨年2016年は12月から入院したし,年の前半に歯の治療を行なったので,医療費控除がたっぷりある.そう言えば,悪名高き「ふるさと納税」もやったな.実にやりがいのある確定申告になるに違いない.

さて,去年を思い出しながら何をすべきか考える.先ずは国税庁の「確定申告書作成ページ」に行って,何はともあれ申告書の作成を開始する.

手元には以下の書類を準備.

  • 会社から送られてきた「源泉徴収票
  • 保険会社から送られてきた「控除証明書」
  • 医療費の領収書の束
  • 証券会社から送られてきた「特定口座年間取引報告書」
  • 源泉徴収されていない所得の明細
  • 控除請求する必要経費の領収書の束
  • ふるさと納税の証明書

税務署は近くにあって提出は簡単.e-TAXのメリットは感じられない(のでやってない).もっとも今年は自分で提出には行けないので,代理を立てないといけないが。

まずは医療費の領収書の束から,「いつ(何月何日)に」「誰のために」「誰に」「いくら払ったか」とそれが「保険で補填される金額」をエクセルに入れていき,医療控除の金額を決定.病院への交通費も忘れずにここに追加.

源泉徴収されていない所得に対しては,そこにかかった必要経費の詳細もエクセルに入れて,必要経費を計算.経費項目は「収支内訳書」に記入することを前提に,そこに定義されている科目「荷造運賃」「水道光熱費」「租税公課」「旅費交通費」「通信費」「広告宣伝費」「接待交際費」「損害保険料」「修繕費」「消耗品費」「福利厚生費」「雑費」などと分類する.福利厚生なんかに一円も使ってないけどね.科目は自分で新たに作っても良いようだ.

後は,国税庁の申告書作成ページに入力していくだけ.入力が無駄にならないように,時々データをセーブする.

半日で入力完了.後は入力結果を印刷して,税務署に持っていくだけだ.しかしきっと何か忘れているので,少し熟成させることにしよう(つまり,すぐには印刷・提出せずにしばらく手元に置いてく).

悩ましいのは,健康保険で付加給付というものが数ヶ月後に給付されること.これは医療費の中で「保険で補填される額」として申告すべき.しかしまだ出てないし,いくら出るのか自分では容易には計算できない.生命保険に付属している医療保険にも若干入っているが,まだ請求すらできていないし,請求したとしてそれがいくら出るかも簡単にはわからない.しかし確定申告は3月15日までには完了しなければならない.

さて,私はどうすればいいのだろう?ググってみる・・・

が,結局どうすればいいのか直接の答えは見つからない.

医療費の申告は5年間できるとあるが,付加給付や保険金が確定していないから,来年で良いだろうか?でも医療費以外の理由で確定申告はしなければならない.申告の際には医療費控除を書かねばならない.

色々悩んだが,結局,

によると,納付額が変わる場合 (私のケースでは,付加給付や保険金が出た時は控除が減るので,当然納税額が変わるであろう),後で修正申告すれば良いとある.税務調査の前の修正であれば,「過少申告加算税」はかからないし,もし調査が始まって,加算税がかかったとして,税額50万円まではその5%と言うことなので,著しい不利益が生じることはなさそうだ.

さあて,懸案の一つがこれで片付いた.